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topics 2015-12-21

早稲田、かく戦えり 「三度目の臙脂(えんじ)決戦。届かなかったあと一点」

4Q、試合残り3秒。逆転勝利を目指して蹴ったFGは、無念にもゴールポストの下を通過した。この瞬間、立命大の勝利が決まり選手達は崩れ落ちた。

これまで2度、立命大に甲子園ボウルで大敗を喫し、三度目の正直として挑んだ今大会。主要メンバーの度重なる負傷退場もあったが、オフェンス、ディフェンスともに奮闘。立命大をあと一歩のところまで追い込んだが、27-28とマルーンレッドの壁をまたしても超えることはできなかった。

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コイントスに勝利した早大は後半をチョイス。K/P佐藤のキックオフで試合が始まった。互いにファーストシリーズは3アンドアウト。ディフェンスゲームの試合展開になると思われた。

しかし関西王者、立命大が力を見せた。続くシリーズで80ヤードのドライブ。最後は、立命大RB長谷川に押し込まれ先制を奪われた。オフェンスもなかなかテンポが作れず、結局ファーストダウンを一度更新しただけで、1Qが終了した。

 2Qに入っても立命大ペースが続く。試合序盤から2DLを敷いた早大ディフェンス。粘りの守備を見せるも立命大RB西村(七)のランが炸裂。63ヤードの独走TDを決められ0-14。

さらに続くシリーズでは、QB笹木がインターセプトを喫し攻撃権は立命大へ。ここでもTDを決められ0-21。このまま立命大ペースで前半終了かと思われた。しかし、オフェンスの1つのプレーで流れが変わった。

 それはパントフェイクからのランプレー。しかもRB須貝が股を通してRB北條に手渡すフリをするという、立命大戦に取っておいた複雑なトリックプレーだった。これが見事に決まり、RB須貝が左オープンを走り切りTD。反撃の狼煙があがる。

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勢いに乗った早大は2Q終了間際、QB政本からのロングパスをWR岡田が好捕し、TD。14-21と1ポゼッション差で前半を折り返した。

 「最後まで全員でプレーし続けよう」(主将DL村橋)。後半に入り関東屈指のディフェンスチームが躍動する。立命大オフェンスに、ほとんどダウンを更新させない必死のディフェンスを見せる。

一方、立命大はQB西山のスナップミスでボールをファンブル。これに反応したDL小宮山がリカバー。そのままFGに繋げ、17-21。続くシリーズではQB政本からWR諸口へのロングパスがヒットしTD。21点あった点差を遂に逆転した。歓喜に沸く早大ベンチ、そしてアルプス席。しかし、リードを奪ったのはほんの数分のことだった。

続くシリーズ、立命大QB西山、RB西村(七)の2年生コンビにディフェンスが翻弄され、4Q最初のプレーでTDを献上。早大は再び追う展開となった。

悲願の日本一へ負けられない早大は、WR鈴木へのロングパスやRB須貝のランで攻め込み、相手陣内へ。ここはFGを選択し、成功。残り6分48秒で1点差とした。続く立命大の攻撃をディフェンスが3アンドアウトで抑え、流れは早大に来たように見えた。

だがQB政本がWR岡田へ投じたパスを、立命大DB奥野(喬)がまさかのインターセプト。反撃の芽を摘まれ、残った時間は4分15秒。このまま時間をコントロールされれば敗戦が決まる。

まさに背水の陣。そんな窮地の中、LB加藤、DL村橋を中心にディフェンス陣がここでも奮起し、好タックルを連発。相手の反則にも助けられ自陣12ヤードからの攻撃権を得る。

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 残り時間は1分46秒。逆転勝利へのドライブが始まった。パスを警戒する守備に対しQB政本は好スクランブルを連発。途中反則があったものの敵陣35ヤードまで前進。残り3秒となりキッカーの出番となった。距離にして52ヤードのFGトライ。これまで何度も、その右足で早大を救ってきたK/P佐藤にすべてが託された。

3万3000人の観衆が見つめる中、K/P佐藤が右足を振りぬく。その刹那、僅かに立命DLの指先をかすめる。選手全員の想いを乗せたダ円球は、ゴールポスト手間でまさかの失速。

試合終了の合図とともに、K/P佐藤は崩れ落ち、関西の臙脂は喜びを爆発させた。

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「最後、監督を男にしたかった」。そう悔しさを滲ませ涙を流した主将DL村橋。しかし、「全員をまとめるのは非常に大変だったんですけど、主将をやって良かった」と、総勢100名を超える部員を一年間率いてきた男の顔はどこか清々しいものがあった。

 

「チーム全体としてやらなければならないスタンダードのこととかは、この3年間で随分あがってきた」(濱部監督)。

5年ぶりの出場となった今大会。決して早大の前評判は高くはなかった。けれども1点差という好ゲームに持ち込めたのは、就任して3年が経つ濱部監督の存在が大きいだろう。就任当時に比べ、自分の考えが部全体に浸透。選手と監督間に交錯する部分がなくなり、一年を通じ選手達のプレーに迷いがなかったように見える。

「結果を出すためには自分が成長しなければならない」と語った濱部監督。まだまだ選手とともに成長できる。熱い思いを持った監督の元、関東の臙脂戦士たちはどこまでも進化していく。残った3年生以下のメンバーに託された『日本一』。今大会の悔しさを糧に、再び聖地・甲子園を臙脂に染め、『日本一』へ躍動することを期待する。

 

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記事;大槻竜平(早稲田スポーツ新聞会)

写真;近藤廉一郎(早稲田スポーツ新聞会)

http://wasedasports.com/

編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

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