西日本(関学):02注目選手

QB#6伊豆充浩(4年)

エースQB伊豆が聖地甲子園を沸かせる。今季はリーグ戦でのパス成功率は、関西2位の59.5%を記録し、ランでは最終節立命大戦でチーム2位の49ヤードを獲得。昨年のリベンジに大きく貢献した。2年時まではパンターとしても出場。西日本代表校決定戦決勝で再び立命大と対戦した際には40ヤードのパントキックを成功させた。「投・走・蹴」の三拍子が揃った選手だ。

実力不足を痛感した。スターターQB斎藤(15年卒)の控えとして、2年時に関西5連覇を経験。昨年は3年生ながらエースQBとなったが、関西制覇を懸けた最終節立命大戦でインターセプトを許すなど、自らのミスもあり敗北した。「去年は先輩がいたから勝てた」と厳しい現実にぶつかった。
今季最終学年となり、多くのことに挑戦した。「まずは自分が変わること」。リーグ戦序盤ではあえてランを選択肢から外し、パスだけにこだわった。「相手が立命大なら簡単にランを通してもらえない。パスだけで打開できる力が必要だった」。しかし、それが裏目に出た。第3節の龍谷大戦ではパス成功率が40%と今季最低を記録。チームメイトからは「何があった」と問われることもあった。各大学に大差の勝利を収める立命大に、焦りも感じた。だが、その危機感が伊豆を変えた。「引退の実感が湧くようになった。負ければ終わり。考えすぎずにプレーする」。第5節関西大戦では、今季最高のパス成功率70%を記録。TDも決めて、勝利に導くQBへと成長を遂げた。

アメフットと出会って8年目。中学2年の時、野球少年だった伊豆はテレビで見たNFLの試合をきっかけに、今や関西を代表するプレーヤーにまで登り詰めた。高校時代の恩師、大学の仲間、関西のライバル、両親。多くの人に支えられ伊豆は強くなった。「周りの助けがあってここまで来られた。恩返しだと思ってプレーする」。2年ぶりに甲子園の地を踏みしめる。伊豆が早稲田を打ち破り、ライスボウルへの切符をつかむ。

記事;八十島宏暢  撮影;八十島宏暢

RB#40橋本誠司(4年)

「誠司劇場」が開幕する。2年時に3TDを決め、甲子園ボウルMVPに輝いたRB橋本誠司。今季はケガに悩まされ悔しさの残った昨年から復活。エースRBとして聖地・甲子園に帰ってきた。

2年前の冬、「橋本誠司」の名は一気に全国区となった。リーグ戦では8TDを決め、パワーバックとして当時の鷺野主将と関学二枚看板に。初出場の甲子園ボウルでは、いきなり3TD。2年生ながらMVPに輝いた。ファイターズ人生は順風満帆に進むと思われた。
待っていたのは苦しい3年時だった。リーグ通算1TDに終わり、立命大戦では鉄壁に跳ね返された。前年には中央をダイブし、ダウンを更新し続けた橋本が、ディフェンスを超えられず1ヤードを奪えない。ケガによるブランクが大きかった。その上、社会人に通用するようにと増やした体重は逆効果に。スピードが低下し、キレを失った。

どん底からはい上がった。今秋、第2節の甲南大戦で2TD。春シーズンは0本だっただけに、昨年の東京ボウル以来、279日ぶりの歓喜だった。「プレーができていること、直接得点に絡めたことが何よりもうれしい」。プレーできない、得点できない期間を過ごしたからこそ、TDの重みはひとしおだった。そして第5節京大戦。第1Qに70ヤードの独走でエンドゾーンを駆け抜けると、最終Qには代名詞のダイブでTD。「誠司復活」を印象付けた。
1ヤードに泣いた男が1ヤードで歓喜を手にした。立命大との西日本代表校決定戦決勝。第4Q、残り2ヤードの場面を託された橋本はダイブでダウン更新。その後のプレーで同期のRB加藤がTD。試合を決める追加点の誕生へとつないだ。「こんなに嬉しいのは初めて」。2年前手にした学生日本一をも超える喜びがあった。

甲子園と言えば「橋本誠司」。サイズを生かし、中央へと飛び込み、足でも見せる。昨年苦しんだ分まで、帰ってきた舞台でチームに歓喜の渦を巻き起こしてくれるはずだ。2年前、甲子園の地でアメフット界に衝撃を与えた男が再び驚きを与える。

記事;眞光可菜子  写真;眞光可菜子

WR#85松井理己(2年)

ついに「松井理己」の名を全国に知らしめる時が来た。1年生だった昨年、立命大相手に2TDを決めるなど、チームの主軸として活躍した。だが、昨年の悔しさは知るものの2年前の歓喜は知らない。初の大舞台でTDをもぎ取りに行く。

無名の進学校からファイターズの主軸となった。高校アメフット界においては「弱小校」の市立西宮高で競技を始めた。だが「自分がいいプレーをしても勝てない」。勉強のため練習時間は限られ、最後の大会も松井自身は県大会で優秀選手に選ばれたが、チームは決勝トーナメントで1回戦負け。結果を残せずに終わった。「強豪大学」に入学し、持ち続けるのは「誰よりも活躍したいし、負けたくない」。高校時代から結果を残してきた選手が多い関学で、1年目から活躍できた裏には強い気持ちがあった。

2015年8月に行われた関西学生リーグ開幕前の報道説明会で、報道陣からの注目選手は誰かとの質問に、鳥内監督の口から1年生の名前が飛び出した。「関学史上最高のレシーバーになる」。それが松井だった。
その年の第2節京都大戦から出場すると、最終節立命大ではチームトップの2TD。1年生ながら大車輪の活躍を果たした。「正直、うまくいきすぎた」。最高のスタートを切った。
悔しさも知った。2年目の秋季リーグは万全の状態で迎えられず、スタメンに名前を連ねることは出来なかった。それでも初戦の同志社大戦では結果を出す。第4Q2分29秒、「絶対に捕るからどうしても出してほしい」。本来入るはずだった先輩に頼み込み、プレーに入るとTDを決めた。だが、それ以降は捕球ミスをする場面が増えた。第6節京都大戦ではインターセプトも受けた。「自分が出ても意味がない」。ぼう然と立ち尽くした。
輝きを取り戻した。まだ2年生。授業も多い中、可能な限り練習に時間を割き、夜は照明が消えるまでQB伊豆に練習に付き合ってもらった。迎えたリーグ最終節立命大戦。試合開始2分1秒で伊豆が投じた30ヤードのパスを先制TDにつなげた。「ビッグゲームで1本捕れて自信になった」。チームで唯一、立命大を相手に2年連続のTD。遠のきかけたエースレシーバーへの道を、一気に引き戻した。

初めて学生の頂点を懸けた戦いに臨む。「関学史上最高のレシーバー」へ。監督自ら口にした逸材がライスボウルへの道をつなぐ。

記事;眞光可菜子  写真;八十島宏暢

LB#47山岸明生(4年/主将)

言わずと知れたファイターズの主将が、LB山岸明生だ。普段は物腰が柔らかく誰からも慕われる。しかし、ヘルメットをかぶれば一変。目の色を変え、狙った獲物は逃がさない。6月に行われたメキシコ自治大学戦でも、逆転を許した直後にインターセプトを決めるなど、鋭い嗅覚で幾度もチームを救ってきた関学が誇る万能型LBだ。スピードと判断力、そしてボールへの嗅覚が山岸の強み。1年時の春からスタメン出場し、春の日体大戦でインターセプトを決めるなど、圧倒的な存在感を示し続けた。2年時にはU-19の主将を務める。実力とリーダーシップを発揮し、順調にアメフット人生を歩んできた。

コンディションが整わずにサイドラインから見つめ続けた今年の春シーズン。春の国内最終戦となったサイドワインダーズ戦で待ち望んだ瞬間が訪れた。第1Q開始直後、インターセプトを決めるとそのままエンドゾーンまで駆け抜けTD。いきなりのビッグプレーにスタンドは沸き立った。たったワンプレーでチャンスをものにする。劇的な復活を遂げるともに、主将としての覚悟を示した。

この秋も決して順調な滑り出しだったわけではない。第1シリーズから先制点を決められた京都大戦。「自分のプレーで流れを変えたかった」。理想とするプレーが出来ていない。主将としてチームを救えない自分がもどかしく、歯がゆい日々が続いた。
そして迎えたリーグ最終節立命大戦。昨秋は関西6連覇を阻まれた宿敵。スカウティングチームの選手を立命大選手と見立てて練習するなど、常に「打倒・赤豹」を意識してきた山岸に火がついた。
強力な立命大攻撃を終盤まで完封に抑え込み、4Qには山岸自身もQBサックを決めセーフティをもぎ取るなど、「1年間やってきたことが間違えていなかったと思えた」。積み重ねがカタチになって自信になった。

1年間の集大成を見せつける時がやってきた。昨年の甲子園ボウルはスタンドから見つめた。熱気と歓声に包まれる球場。「甲子園で防具を着るのは俺らや」。決意から始まった1年も大一番を迎える。「自分のプレーでチームを勝たせる」。歓喜の瞬間へ導くのは山岸だ。

記事;小林実央  写真;眞光可菜子

DL#92安田拓(4年/副将)

熱き副将の声が聖地・甲子園にこだまする。DL安田拓がディフェンスの最前線からファイターズをけん引する。

幅広いプレーが持ち味だ。DLだけでなく、LBもこなす。2年時のリーグ戦ではLBとしての出場経験もあり、QBサック、ロスタックルを連発。今季も立命大戦では2戦ともLBとして出場し、DLの1列後ろから、機動力と判断力で立命大オフェンスを封じ込めた。
副将としては、「ディフェンスから圧倒すること」にこだわってきた。チームに求めてきたことは、「点を取るくらい圧倒して、オフェンスを巻き込む」こと。リーグ最終節立命大戦ではディフェンス陣が一丸となり、リーグ屈指のエースRB西村を、昨年の124ヤードから53ヤードに抑える働きを見せた。さらに第4Qには、LB山岸がQBサックからセーフティ。相手を圧倒し、得点するディフェンスへ。ディフェンス陣の集大成を宿敵相手にぶつけた。

性格は非常にストイック。下級生時から試合に対する気持ちが強かった。2年時の関西大戦。当時2枚目の選手だった安田は、負傷した選手の代わりに急きょ出場。だが、ビッグゲームを前に恐れはなかった。「ずっと、早く俺を出せという気持ちでやっていた。だから緊張も恐れもなかった」。試合前にはしっかりと相手QBを分析。「走るQB」と踏まえた上で、逆サイドから回り込みサックを決めた。「とにかく必死だった。雨が降っていたことさえ、試合後に気づいた」。その後、スタメンの座を奪取。活躍の原点はその気持ちの強さにある。

春シーズン当初、副将となった安田は「自分は圧倒的な存在ではない」と打ち明けた。幹部になる上での実力が、まだ足りないという自覚があった。だからこそ、誰にも負けないことを自分にも周りにも求めた。「OLの井若以外、誰にも負けない」と言えるまでに成長し、強くなって関西での戦いを終えた。
「どんな男になるのか」という鳥内監督の問いに、「下手くそなりに泥臭い、かっこいい男になる」と誓った春。真の「かっこいい男」になるために、聖地で早稲田を倒す。

記事;八十島宏暢  写真;八十島宏暢

DB#37小池直崇(4年)

ディフェンス陣の最後方に注目だ。DB小池直崇は1年時からスタメンを張り続ける。身長183cmの長身を活かし、ビッグプレーを量産。窮地でインターセプトが出来る力と正確なタックル力を持ち、学生界随一のSFと言っても過言ではない。
長身から大型SFとも称される小池の魅力はビッグプレーとタックル力。1、2年時はインターセプト王にも輝いた。甲子園ボウル出場を決めた西日本代表校決定戦・ウェスタンジャパンボウルでも、インターセプトを奪ってゴール前までリターン。貴重な追加点につながるターンオーバーとなった。タックル力も関西屈指。強烈なヒットでロングゲインを許さない。

挫折も味わった。昨秋の関西大戦。第2Qにタックルミスをし、許したTDが唯一の失点となった。27ー30で敗れ、連覇を断たれた立命大戦でもミスを連発。「自分のせいで負けた」と、かつてないほどに涙を流した。「もうイヤや」と弱音を吐き、小池は完全に自信を喪失した。
しかしその後、東京ボウルのあとで、同期の岡本から「お前が落ち込んでどうすんねん。お前が落ち込むとDBパート全体が沈む」と、激を飛ばされた。パートを引っ張るのは自分。思い直した小池のラストイヤーが始まった。

今季の小池は、DB陣のパートリーダーを担う。「昨年は山ほどミスをした。今年は自分が一番成長してパートを引っ張る」。人を引っ張ることが苦手な小池を支えたのは、先輩の梅本(2016年卒)だった。「苦手でもプレーをしている人間のために、お前が引っ張れる存在になれ」。この言葉を胸に厳しさと優しさを兼ね備えたリーダーとして、指揮することを心掛けている。DB全体で思い切り攻めたプレーをし、ビッグプレーを狙う姿勢を徹底する。リーダーとしても選手としても、貪欲な1年になった。

甲子園での一発を狙う。聖地の芝を踏むのは3回目。過去2回の出場ではインターセプトを目標とするも実現していない。今年こそインターセプトでTDを決め、“救世主”小池となって観客を沸かせる。

記事;松尾誠悟  写真;眞光可菜子

+++

関学スポーツ  http://sports.geocities.jp/kghonbu/
編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)