QB#18西野航輝(3年)

昨年までチームの司令塔だった伊豆が卒業し、ぽっかり空いたQBの座。春、そこに西野の名前はなく、視野を広げるためにQBからRBにポジションを変えて試合出場を重ねた。夏合宿から再びQBの練習を始めたが、そのポジションゆえの悩みがあった。

「関学はOBも多く、部員も多い。そんなチームのオフェンスを引っ張るというのは、とてもプレッシャーがあって、最初はミスしたらどうしようと思いながらプレーしていた。ただ、思い切りプレーしないと自分らしさがでないことに気付き、プレッシャーを気にせずプレーすることにした」。

一皮むけた夏を経て、秋は初戦からチームを任され、試合を重ねるごとにコーチ陣からも「予想外の成長を遂げた」と、評価されるほどの数字を残した。リーグ戦ではパスを84回投げて55回成功。674ヤードを稼ぎ、レーティングではリーグ1位に輝いた。

また西日本代表校決定戦では、もともと能力の高かったランでも、パスからのスクランブルを判断良く多用し、要所でのダウン更新を決めた。

「今日の試合は楽しかった」。

これまで西野は、エースQBであることを楽しめなかった。それはプレッシャーがあり過ぎるから。しかし2度目の立命戦では、短いパスや確実に決めないといけないパスを決めることが出来、判断良く得意の脚力を活かすクオーターバッキングができた。

パス能力などは、過去の関学のQBに比べるとまだまだ至らない。しかし懸命に練習に取り組み、1シーズンの経験を積んだことで、レベルアップは果たせつつある。西野自身も「立命戦の内容に満足することなく、しっかり反省して日大に挑みたい」と話す。

エースQBとしての自覚も芽生えた。あとは甲子園ボウルを楽しむのみだ。

記事;江田政亮(スポーツライター)
写真;P-TALK
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

RB#34山口祐介(3年)

「彼はえげつなく強い。1年の時から別格やった」とコーチ陣から評価される山口の体幹能力。1回のタックルで倒れない強さで1年時から試合に出場し、ケガをしない身体で順調に経験を積んできた。

今年の春にはエースRBとして活躍することも期待もされたが、「自分でこのチームのランを背負う」という思いには至らず、4年生RB#28高松の2番手に甘んじた。リーグ戦では3位となる46回のキャリーで491ヤードを稼いだが、やはりエースRBは高松。しかし、2度目の立命戦で高松が負傷のため試合出場できず、山口しかいない状況に追い込まれた。結果、15回キャリーで202ヤードを稼ぎ出し、2TDを奪う大活躍。コーチ陣に「やっと一皮むけた!」と言わしめた。

山口は横浜栄高からフットボールを始めた。チームの成績は、山口が高校3年時に関東4位に食い込むのがやっとだったが、走りの力強さは評判が高く、当時連覇をしていた関学から声がかかった。

「やるからには日本一のチームでやりたい」と進学先を関学に決め、1年の春からすでに試合に出場し、持ち味のタックルされない走りを見せつけてきた。

関学RB陣は「低くなるな。突っ込むな。よけられるならよけろ」と指導を受ける。山口が大活躍した立命戦は、まさにその走りを見せ、止まっているように見えたが、捕まれておらず、足をかき続けていたので空いている穴を見つけて走ることができた。

山口自身は「OLがしっかりブロックして走路を確保してくれていた」と話すが、足をかき続けたことを鳥内監督も「個人技をひさびさ見た」と評価した。

甲子園ボウルも高松の復帰が危ぶまれ、山口しかいない試合となる。「気を抜かず精一杯練習して挑みたい」と話す山口。元々持っていた能力に加え、メンタル面でも覚醒した期待のRBがチームを学生日本一に導く。

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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

OL#70井若大知(4年/主将)

中学時代に箕面自由学園中学でフットボールを始め、高校生に交じって練習。クラブチームは千里ファイティングビーに所属した。練習初日はやりたかったQBのフェイスや用具を準備して参加したが、コーチから「あっちいってきて」と言われた先がOLパート。それ以来、OLとしてプレーを続けてきた。

高校2年は関西ベスト4、高校3年は大産大附高に敗れ府大会で敗退。関学への進学は「あこがれていたチームでフットボールをしてみたい」と思ったから。

1年の時から責任感が強く、秋のリーグ初戦からずっと試合に出場。気が優しくて力持ちが多いOL陣の中では、珍しく気持ちを前面に出してプレーするのが持ち味。OLとしては173センチしかない小さな身体をカバーするためだそうだ。

主将に選ばれたのは、練習に対する姿勢を誰もが認めているから。1年の時、前主将のDLのOBにお願いし、毎日パスプロテクションを練習。そのOBが「もう嫌や」と根負けするほど練習が続いた。そのおかげでパスプロテクションのテクニックやボディバランスは、学生界ナンバー1の呼び声が高い。

完璧な主将であり、選手であると思われがちな井若だけに、他の4年が依存してしまい学年として一枚岩になることができなかった。秋のリーグ戦に入ってからも、その雰囲気は払拭されず、井若自身の主将としての姿勢を改めることを、監督やコーチ陣から指摘された。悩んだ末、自らが先頭でチームを引っ張るのではなく、チームを下から押し上げる役目に徹した。結果、2度目の立命戦を完璧なチーム状態で戦うまでに仕上げた。

「強い日大に対して、どうやって勝てる確率をあげていくのか。無我夢中でやるしかない」と井若。気持ちを前面に押し出し、美しいパスプロテクションを見せる井若に注目してほしい。

記事;江田政亮(スポーツライター)
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

DB#3小椋拓海(4年)

小椋は、同じDBというポジションながら、昨年までプレーしてきたCBと動きや求められるものが大きく違うSF(セーフティ)を新チームになってから任された。

「見える景色もまったく違うし、周りの動きをしっかり理解しないと務まらないポジション。ようやく慣れてきたが、まだまだ勉強しないといけないことがある」と小掠。

CB時代はディフェンスメンバーとコミュニケーションを図ることもあまりせず、孤独で1対1にこだわってきたが、SFになってからは自分自身がどう止めやすくするかを考え、積極的にコミュニケーションを図るようになった。

小学4年の時から千里ファイティングビーでフットボールを始めた小椋。箕面自由学園高では、WR、RB、DBのポジションを器用にこなしたが、高校2年のときは関西の決勝で関学高等部に敗退。高校3年では府大会で大産大附高と対戦し、現在は立命のエースRBである西村にいいように走られて負けた。

進学の決め手は、その頃連覇中だった関学でフットボールをやりたいという思い。下級生の頃から頭角を現し、1対1で負けないDBとしてチームを支えてきた。今年は約30人という大所帯のDBパートで、ユーモアのあるところを見せてチームのムードにも気を配っている。

ウエイトトレーニングで鍛えたラインに負けないパワーと、相手チームを徹底的に分析するSFとして進化中の小椋。甲子園ボウルでは「立命に勝ったことを自信にして、西日本代表として恥じないプレーを出せるように自分が引っ張れば結果も伴うと思う。スタジアムが沸くようなタックルをしたい」と抱負を語る。

ディフェンス陣の最後尾。他のメンバーに指示を出し、ランにパスに抜けてきたキャリアをタックルする。頼もしい守護神が甲子園でも躍動する。

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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

LB#44松本和樹(4年/副将)

一度敗れ、失うものがなくなったことで、初心に立ち返ることができた。2度目の立命との試合後、「2週間前の試合は21点も取られてしまって、オフェンスやキッキングに苦しい思いをさせてしまった。この試合は絶対完封しようと練習してきた。3点はとられてしまったけれど、結果が伴って素直にうれしい」と、松本は安堵の表情を見せた。

松本は関西大倉高からフットボールを始めた。当時から能力の高いLBとして有名だったが、チームは高校2年では立命宇治高に、高校3年では関学高等部に全国大会で敗れた。関学を選んだ理由は「立命宇治高に敗れたから」。

大学進学後は、2年からレギュラーとして試合に出場し、下級生の頃から4年の行うミーティングに参加して、プレーの理解度を高める努力も重ねた〝賢い〟選手の一人だ。頭だけではなく身体も鍛えた。下級生時に試合出場をして痛感したのがフィジカルの弱さ。1年のとき80キロ程度だった体重も、今は97キロまで増やしてきた。宿敵・立命を倒すために身体能力が劣る部分を、プレー予想のアジャスト力、そして地に足をつけたタックルにこだわって補ってきた。

こうした地道な努力の積み重ねでトップ選手としての評価を得た松本。チームでは面倒見が良く、後輩たちが相談しやすい先輩。副将として、ディフェンスリーダーとして、上から目線ではなく後輩たちとともにユニットを作り上げてきた。

「日大の選手はみんな個人能力が高く、QB林のパスやRBウィリアムスのランは脅威。ポジションごとの責任を明確にしなければ止められない」と、甲子園ボウルへの決意を語る松本。個人的にこだわって1年間必死に取り組んできたタックルでしっかり止め、ディフェンスで試合の流れを作りだす。

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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)

DL#58藤木秀介(4年/副将)

「キーとなるプレーでハードタックルを見せ、相手の出鼻をくじくことができる選手」と評価の高い藤木。関西学院中学部からタッチフットボールを始め、関西学院高等部でもアメリカンフットボール部に入部、1年の春の決勝からスタメンに名を連ねた。

中学、高校とも3年時には主将としてチームを引っ張り、大学でも副将としてLB松本とともにディフェンスをリードする。今でも高等部の練習に顔を出し、後輩の指導に当たるなどチーム愛が強く、またユーモアがあり周囲を笑わせる性格で多くの後輩から慕われている。

藤木は「高校の時はがむしゃらに1対1で相手OLを押し込むことを考えていたが、大学に入ってからは、OLに当たってからリードしていないと攻撃が止まらないため、強く当たることと、それを活かした上で自分がタックルするというのを身に付けた」と話す。

大学でも1年秋の神戸大戦からスタメンとなり、自分のポジションだけではなく、ディフェンス全体で相手攻撃をどう止めるかということを考えるようになった。この4年間で持ち味のスピードを落とすことなく体重を15キロ増やすことにも成功した。

「藤木のいるところにランナーがいる」と言われるほどボールへの嗅覚が鋭いことも、能力の高い選手の揃う関学で1年時からスタメンを守り続けてきた理由だ。

藤木自身も「下手くそなら下手なりにパシュートする。1人で止められなくても全員の寄りで止めることが大切」と、後輩たちに伝えてきた。

甲子園ボウルでは「どんな状況においても自分が流れを変える。危ないシーンでも自分がディフェンスの先頭に立って、気持ちを込めた誰よりも激しいプレーで、ディフェンス全体を鼓舞して勝てるようにしたい」と藤木。

個人的な目標は、ずばり「QBサック」。激しいタックルを相手QBに浴びせモメンタムをしっかり引き寄せる。

記事;江田政亮(スポーツライター)
写真;P-TALK
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編集;畠中隆好(officeNEAR/甲子園ボウルPJT)