Road to Koshienbowl 日程&結果【全国】

RB#32 西村 七斗(2年)

今季、関西のみならず国内フットボールで最もブレイクした男といえば、この西村七斗であろう。平成7年7月7日生まれのラッキーボーイは、今や立命大の押しも押されもせぬ看板選手へと飛躍を遂げた。

1年生の時は腕の負傷があり、試合出場も限られていたが、今季は誰もが知る活躍を見せることとなる。春からフィジカルの強化に務め、10キロ近く増量に成功。また、「重心を低くして走ることを意識している」と技術も身につけ、実に900ヤード13TD。もちろんラッシング、スコアリングともに関西学生リーグ1位の栄光を手にした。
今季は毎試合でTDを量産する驚異的な活躍を披露、独走もいくつもあり、次第に注目を集めるようになった。LB陣さえ抜けてしまえば、彼を止めるのは至難の業。一旦スピードに乗ると手がつけられない西村を、早稲田がどう止めにかかるかが試合の見どころとなろう。西村らのランが出続ければ、立命大のワンサイドゲームになることも十分考えられる。それほど、西村の存在は大きいのだ。

走りだけではなく、タックルをかわすことも得意としている。今季は相手守備を最も悩ませる存在となった。低く素早い関学大のタックルでさえ、簡単には彼を止めることはできなかった。関学大の鳥内監督は「西村ら若手を勢いづけさせたくない」と目論んでいたが、その思惑は西村に崩されてしまう。
ギャンブルプレーからの先制TDを皮切りに、この試合でも快足を飛ばし124ヤード、2TDと活躍。今季はOLの動きも良く、効果的なブロックのあと押しもあって1000ヤードラッシャーに届く勢いであった。

立命大は彼らRB陣の働きによって地上戦を制し、ついに関西の頂点に立った。じっくり取り組んできたラン主体のオフェンスプランが、見事に花開いたのだ。
甲子園ボウルでも、西村のランプレーを止めることは並大抵のことではない。早稲田が死力を尽くしてディフェンスを展開してくる中で、どこまで西村が走れるかが試合の鍵を握る。西村が、西村であること証明できれば、立命大の勝利は目前である。

QB#11 西山 雄斗(2年)

高校時代は立命館宇治高校を率いて全国準優勝を経験し、昨年はU-19日本代表にも選ばれた正統派QBの西山。大舞台をいくつも経験し、今季も若手とは思えないプレーぶりを披露した。2年生ながらスターターとなり、丁寧なパッシングと的確なスクランブル、そしてオフェンスを引っ張る統率力も備わった西山は、甲子園ボウルでも大いに暴れてくれるだろう。

「今季は西山が成長し、終始落ち着いて試合を作ってくれていることが大きい」と、米倉監督は話す。初戦こそ怪我で試合出場の機会を他の選手に譲ったが、第2節以降は堂々たるプレーを見せ、結果的にはパス成功率73%、リーグトップの成績となった。
ラン重視の立命大だが、彼のパスも見逃せない武器である。精錬されたハンドオフフェイクから、猪熊、近江、吉永ら個性豊かなWR、TEにパスを投げ分ける西山。スパイラルの利いたパスは、綺麗にレシーバーへと決まっていく。特筆して身体能力が高いわけではないため、ロングパスやキープで一気に流れを変える選手ではないが、精度の高いパスと、鮮やかなゲームメイクで着実に得点を稼ぐことができる。

対戦する早稲田は守備フロントが強力であるため、パスで打開を図る場面も多く出てくるはず。そのときは是非彼の右腕に注目してほしい。チーム自慢のランプレーと相まって、パスオフェンスで流れを掴む試合を展開したい。

彼のモットーは「気持ちだけは相手に負けない」。名だたる強豪が立ちはだかっても、物おじせず全力で自分の役割を全うする。このハートの強さも、ビックゲームでは大きな武器になる。関学戦でも、多少のミスしても自分のプレーを貫きとおし、激戦をものにすることができた。パスをインターセプトされても、キープで激しいタックルを浴びても、決して止まることのない彼の勝利への思いが、最後は接戦を制する糧となった。

試合後、重圧に耐えた反動か、涙ぐむ西山の姿があった。まだまだ2回生、一戦一戦強くなっていく彼の姿は、立命大の躍進につながっていく。

WR#84 近江 克仁(2年)

今季の立命大は、自慢のOLラインや守備ユニットに経験豊富な4年生が多いが、一方のスキルポジションは才能あふれる若手選手が多いのが特徴だ。WRでは、2回生の近江が今季活躍している。11回158ヤード、1TDレシーブという記録ながら、要所での好捕があるなどチームになくてはならない存在になっている。

入学当初から試合には随時出場、1年生からそのポテンシャルは存分に発揮してきた。しかし昨年の関学戦では、パスを落球する場面もあり、チームに貢献することができなかった。「大学では、ディフェンスのスピードもタックルの激しさも全く違う」と、そのレベルの高さを痛感したが、この1年課題のフィジカルアップに取り組み、安定性も身についた。

再びやってきた今季の関学大戦では、TDを記録、成長を伺わせる内容となった。また西日本代表校決定戦の西南学院大戦では、パスが多いゲーム展開の中で、難しいボールもしっかりとキャッチ、光るプレーを多数見せた。
プレーヤーとしては、そのシェアハンドでどんな球でも確実に拾ってくれる安定感を持った近江。スピードや上背は他の選手に譲る部分があるが、キャッチングセンスは抜群で、関西学生リーグを見渡しても彼と並ぶ選手はごく僅かだ。

今季は近江のほか、スピードスター猪熊、頼れるTE吉永らもおり、空中戦も楽しみである。その中で近江は、QB西山とは立命館宇治高でもチームメイト、まさに強力なホットラインを形成している。西山も「オフェンスの話をするときは、いつも近江」と話し、信頼を寄せていることが伺える。
また高校時代は主将も務めており、レシーバーの立場からQBやオフェンスユニットを盛り立てる役割もこなしている。高校時代と同様、日本一がかかった大一番まで進んだ。当時は決勝で早大学院に敗れたが、大学でそのリベンジを果たすか是非注目してほしい。
若きエースの躍動が、立命大に学生日本一の称号をもたらすか。

DL#57 田辺 大介(4年)

抜群のリーダーシップで、ついに悲願を成し遂げた主将DL田辺。関学戦終了後のフィールドでは、こみあげる思いが涙となって彼の頬を伝った。
誰よりもチームの勝利を願い、それを実現させるために何がキャプテンとしてできるのか、そしてどうすればチーム全員が勝ちにこだわって試合に挑むことができるのか。常に試行錯誤を重ね、優しく、厳しく日々チームを率いてきた田辺の努力が、ついにリーグ最終戦で夢を現実へと変えたのである。

今季、田辺は熱い気持ちを言葉に乗せ、チームを鼓舞してきた。背中で語るというより、チームのために自分たちの良いところ、悪いところをしっかりと声にして主張し、チームの成長を促してきた。誰よりも熱いフットボールへの情熱を持ち、チームの皆がついていきたいと思える好漢である。試合前の円陣ハドルでも大きな声が響き渡り、スタンドまでも一体にする。

立命大5年ぶりの関西制覇の立役者となった田辺だが、チーム発足後の春季は前途多難であった。関大戦、早稲田戦で攻守とも全く通用せず、ショックの大きい敗戦となったためだ。この敗北で田辺は「自分たちは挑戦者である」という自覚を強く意識し、それからの練習に励むこととなる。夏合宿では危機感を持ち、昨年までとは全く別物となる厳しいメニューを組んだ。選手それぞれが自分の限界まで追い込み、春に痛感した彼らと強豪との差を、少しずつ埋めていったのだ。

迎えた秋季リーグでは、徐々に成長を重ね、ついに関西5連覇中だった関学大に土をつけた。想像を絶する過酷なトレーニングや、深夜まで行われる綿密なミーティングによって、彼らは悲願を達成した。しかし、このストーリーは主将である田辺がいなくては完結しなかっただろう。田辺がチームのために全力で取り組んだからこそ、チームも彼を優勝へと導いてくれたのだ。

関学戦後のインタビューでは、「僕らの目標は日本一。関学大に勝てたのは本当にうれしいが、まだ試合は残っている。目標を達成するために、また一から準備していきたい」と、話した田辺の熱いフットボールは、まだ終わらない。

DL#93 仲里 広章(4年)

相手オフェンスチームは、彼の圧倒的な存在感を意識せざるを得ない。学生界最強クラスのDLというレベルにあるのが仲里である。身長174cm、体重121kgとパワー派のイメージがあるが、ひとたびプレーになれば素晴らしいスピードを兼ね備えている。

昨年からスターターの座を射止め、経験を積んできた仲里だが、今季は特に強さが光った。秋季リーグ戦前の取材では、米倉監督も「異次元のフットボールをする選手」と評し、彼のプレーには太鼓判を押している。
その言葉通り、シーズンを通じて相手OLを完全に押し込み、ラン守備を中心に見事なディフェンスを見せた。相手校はほぼダブルカバーで仲里に対し勝負していたが、それをものともせず割り込み、RBやQBの走路を粉砕している。

彼の強みは、低く鋭く飛び出し、オフェンスがブロックを形成する前に押し切れるそのクイックネスにある。相手は想像以上のパワーとスピードに押され、一瞬でプレーを潰されてしまう。今季何度もロスタックルに仕留め、立命大をリーグ最少の喪失ヤードを誇る強豪へと成長させた。
特に仲里が自信を持つランディフェンスは、その活躍が数字にも表れ、リーグ7試合で喪失301ヤード、平均1.8ヤードという驚異的な記録をたたき出した。

甲子園ボウルでも、彼の活躍は必至。早稲田のDLも非常に優秀なだけに、守りあいの展開も大いにあり得る。そんな中で流れを変える可能性があるのが、仲里の規格外のラッシュだ。相手をパントに追いやるだけではなく、ロスタックルやファンブルフォースといったビックプレーも引き出せる圧倒的な力は、立命大の甲子園ボウル制覇に欠かせない要素となってくる。

昨年まで怪我がちで、満足にシーズンを送れない状態が続いていただけに、今季の躍動は際立っている。ラストイヤー、学生フットボールは多くてもあと2試合しかない。学生界最強のDL、仲里の一挙手一投足に大きな注目が集まっている。

DB#20 長尾 和哉(4年)

まさに立命大の小さな巨人。DB長尾は、その類稀なクイックネスで自分よりもひと回り、ふた回りも大きなWRを封じ、今季の優勝に多大な貢献をした一人である。

今季の立命大セカンダリー陣は、開幕から常に不安を抱えていた。
副将の荒木が怪我で試合出場が出来ず、最終戦まで欠場が続いた。また昨年や今春にビックプレーでチームを盛り上げてきた八条も、シーズン終盤にようやく復帰を果たした状態であり、万全ではなかった。なんとかエースCBの奥田や、兄弟で立命大DBを支える奥野敬介、喬平らとともに白星を積み上げてきた長尾だが、最終決戦でパス攻撃リーグトップの関学大との試合を迎えた。

長尾は162cmと小柄であり、大型WR、TEを擁する関学大との一戦では分が悪い。関学大もまた、例年通りDBとのミスマッチを狙ったパスでTDを取りにかかる。しかし長尾は抜群のコース取りと基礎能力を最大限に活かしたヒットで競り合いに勝ち、幾度となくエンドゾーンを死守した。
僅か3点差で勝利した展開にあって、彼のゴール前の守備はまさに値千金の活躍といっていい。特に前半はTDの機会を関学大が得るも、立命大守備の奮闘でラン、パスともに阻まれ、ついにエンドゾーンを割ることができなかった。長尾が前後半通じて好プレーを見せ、関学大の勝負手を封じ込んだのだ。

彼の持ち味は、スピードを武器に素早く立ち回り、相手に仕事をさせないところにある。WRは常に適切なルートを走ることができず、非常にフラストレーションがたまる試合を強いられるだろう。

また、ここ一番ではディフェンスの見せ場、パスインターセプトを記録する活躍も見せている。開幕戦、京都大の1stシリーズをパスインターセプトで封じるなど、今季はリーグで2回を記録。春からフィジカルアップを重ね、スピードが大きく向上した成果が、結果となって表れている。
甲子園でも、長尾のスピード溢れるディフェンスが、縦横無尽に展開されるだろう。

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